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四季折々に思うこと Ⅱ-18

踏花舎 倉橋みどり

「ほたる袋」  イラスト・榎森彰子

新緑の季節になると、慈光院へ行きたくなる。
大和郡山にあるお寺で、車を5分も走らせれば、もう斑鳩。
法起寺の三重塔(飛鳥時代・国宝)が見えてくる。

慈光院は、江戸時代のはじめ、片桐石見守貞昌(石州)が、
父貞隆の菩提寺として建てた臨済宗大徳寺派の禅寺である。
国道9号から伸びる参道は、まっすぐな上り坂。
その先の門をくぐると、新緑の石畳だ。
木洩れ日で、風も緑色に染まるのだ。

石畳の先には茨木城楼門を移したという山門、
そこをくぐると見えてくる書院も、ともに茅葺屋根で、
お寺というよりは大きな農家を訪れたようで、
ほっとした気持ちになれる。
茶人であった石州は、境内全体をひとつの茶席として総合的に演出したのだという。

入山料には薄茶の代金が含まれていて、まずは庭を見渡しながら、一服できる。
書院の座敷から見えるのは、禅寺によくある枯山水ではなく、丸や四角の緑色の刈り込みが配置された、
これも緑色の庭だ。

ふたつの茶室や「女の字」「角ばらず」「独坐」の銘がついた手水鉢(蹲)など見どころはほかにもあるが、
ぜひお寺で手作りされている精進料理(要予約)を味わってほしい。
特に、「たまねぎの丸煮」は、手間をかけて作られたことが伝わってきて、
こころにも栄養をくれる「ご馳走」である。

たまねぎは煮え年月は透き通る  みどり


            

倉橋みどり

奈良に暮らし、奈良をこよなく愛するフリー編集者・文筆家。著書に『奈良の朝歩き、宵遊び』など。奈良の歴史・文化を編集発信するNPO法人文化創造アルカ理事長。武庫川女子大学非常勤講師。奈良女子大学なら学研究センター協力研究員。俳歴33年の俳人でもあり、NHK文化センターほかの講師、俳人協会幹事を務める。