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四季折々に思うこと Ⅱ-16

踏花舎 倉橋みどり

「筆りんどう」  イラスト・榎森彰子

王寺町の達磨寺へ初めてお参りした。千手観音を真ん中に、達磨大師、聖徳太子と並ぶ三像は風格満点。
「日本書紀」に、聖徳太子がこのお寺のある片岡で飢人と会い、衣を与えて……という話がでてくる。
時代が下がると、この人は達磨大師だったというふうになっていく。そして、達磨寺がこの地にできる。

境内には、聖徳太子の愛犬、雪丸の石像もあった。江戸時代のものらしい。
丸顔で両耳が垂れさがった姿はとても愛らしい。人間の言葉を解し、お経を読むこともできたという。
そして、「この像が元日に鳴くと、その年は豊作になる」と観光協会の方に教えられた。
「鳴いたこと、あるんですか?」と少し意地悪な気持ちで聞くと、すかさず「ご自身でぜひ確かめにきてください。除夜の鐘も打つことができますよ」との答え。

この雪丸をモデルにした、町のキャラクター「雪丸」も大活躍している。
町のあちこちにイラストや人形、関連グッズがあるだけでなく、王寺駅から達磨寺までの道には雪丸の足跡のシールが貼ってあり、これをたどれば、迷わずにお寺に着く。
数年前、全国のゆるキャラが集まる人気投票にエントリーした際は、11位という結果に。
「ベストテン入りを逃したのは残念でしたが、11は、ワンワンですからねえ」。
さきほどの観光協会氏は得意そうな顔になった。


この寺に伝説いくつ花は実に    みどり

            

            

倉橋みどり

奈良に暮らし、奈良をこよなく愛するフリー編集者・文筆家。著書に『奈良の朝歩き、宵遊び』など。奈良の歴史・文化を編集発信するNPO法人文化創造アルカ理事長。武庫川女子大学非常勤講師。奈良女子大学なら学研究センター協力研究員。俳歴33年の俳人でもあり、NHK文化センターほかの講師、俳人協会幹事を務める。