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四季折々に思うこと Ⅱ-15

踏花舎 倉橋みどり

「山桜」 イラスト ・ 榎森彰子

東大寺二月堂の修二会が終わると、休む間もなく薬師寺での修二会に心が向く。
「花会式」と呼ばれることが多いのだが、毎年、この法会が近づくたびに、「花会式」とは、なんと美しい名前かと思う。

その由来もゆかしい。嘉承2年(1107)、堀河天皇が、皇后の病気平癒を薬師如来様に願ったところ、回復された。以来、薬師寺の修二会に10種の造花(つくりばな)が供えられるようになり、「花会式」と呼ばれるようになったという。 

10種の花とは、梅、桃、桜、椿、山吹、牡丹、藤、杜若、百合、菊。和紙などを使い、丁寧に手作りされたもので、毎年決まったお宅2軒で約1年かけて揃えられる。その数、約1800本。
花会式の前日にお身拭いが行われるせいもあるのだろうか、色とりどりの造花で荘厳されたお薬師様と脇侍の日光・月光(がっこう)菩薩様は、ほんのりと上気しておられるようにも見える。

花会式は毎年3月25日から31日までの5日間。
10人の僧の「南無や~」の声に参列者の声が重なる法要は、一貫して華やかで激しい。
私がとりわけ好きなのは、早朝3時からの後夜・晨朝の法要。
もちろん日中(午後1時ごろから)や初夜(夜7時ごろから)も捨てがたい。
今年は何度参拝できるだろうか。

 

春暁へ何度も仏の御名称ふ       みどり

            

            

倉橋みどり

奈良に暮らし、奈良をこよなく愛するフリー編集者・文筆家。著書に『奈良の朝歩き、宵遊び』など。奈良の歴史・文化を編集発信するNPO法人文化創造アルカ理事長。武庫川女子大学非常勤講師。奈良女子大学なら学研究センター協力研究員。俳歴33年の俳人でもあり、NHK文化センターほかの講師、俳人協会幹事を務める。