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四季折々に思うこと Ⅱ-37

踏花舎 倉橋みどり

 
イラスト・榎森彰子

3年前、中将姫に関する講座を企画したのがきっかけで、文楽を観るようなった。講座の直後に中将姫が主人公の「鶊山姫捨松」(ひばりやまひめすてまつ)が、国立文楽劇場でかかったからだ。
久しぶりに生で観た文楽は、太夫さんの声、三味線のメロディー、人形の生きているような動きに加え、言葉遊びもふんだんに盛り込んだ台詞に惹きつけられた。
それから主な公演には必ず足を運ぶようになり、やがて奈良が舞台になっている作品が多いことに気付き、ますます好きになった。
文楽の傑作のひとつ「義経千本桜」では花盛りの吉野山が出てくるし、「冥途の飛脚」で忠兵衛と遊女梅川が死を覚悟して大和国新口村へと向かう。東大寺の初代別当・良弁が主人公の「二月堂良弁杉」というのもある。

今年の新春公演で演じられた「妹背山婦女庭訓」の舞台もまた奈良だ。
天智帝から始まる壮大かつ荒唐無稽なストーリーで、体文協の旅でも訪れた三輪山あたりでドラマが展開し、お三輪という名の娘も活躍する。劇場に入る際はもちろん検温があり、観客数は定員の半分以下に抑えられ、座れない座席には文楽の衣装の色柄を写した華やかな紙が置かれているが、なにか寂しい。
寂しいけれど、しばらくは我慢して、奈良とも縁の深い文楽を観ることで末永く応援していきたいと思っている。




「東西」にも上方訛初芝居 みどり


            

倉橋みどり

奈良に暮らし、奈良をこよなく愛するフリー編集者・文筆家。著書に『奈良の朝歩き、宵遊び』など。奈良の歴史・文化を編集発信するNPO法人文化創造アルカ理事長。武庫川女子大学非常勤講師。奈良女子大学なら学研究センター協力研究員。俳歴33年の俳人でもあり、NHK文化センターほかの講師、俳人協会幹事を務める。