topics トピックスTOPICS

四季折々に思うこと Ⅱ-34

踏花舎 倉橋みどり

「藤原京跡からの畝傍山」 
イラスト・榎森彰子

奈良育ちでない私にとって、大和三山(香具山、畝傍山、耳成山)は万葉集にも登場する聖なる山。
誰でも気軽に登ることができると知ったときは驚いた。
奈良生まれの友人は、「一日で三山踏破できる」と言う。
いつかは…と思いながら、なかなか果たせずにいた。

先日、「ふるさとリポーター」を任命されているNHKラジオ深夜便の取材も兼ね、夫とふたりで三山登山を計画した。
朝五時起床、張り切って窓を開けると、大降りの雨。
でも、ラジオに出演するまでに登ることができる日はこの日しかない。
雨合羽とタオルをリュックに入れ、家を出た。

最初は一番北にある耳成山へ。「名勝大和三山 耳成山」の標識と「耳成山口神社」の鳥居が登山口の目印だ。
無料駐車場に車を置くころには小雨になっていた。
登山口で、ご近所の方らしき年配の四、五人と一緒になる。
「じゃ、行ってくるわ」「僕は先に三輪山に」などと話しながら、毎朝登っておられるのだろう、みな軽装で足取りも軽い。
少し遅れて私たちも歩を進める。
登山道は螺旋状になっていて、勾配がほとんどなく、歩きやすい。
10分ほど歩き、道がふたつに分かれるところで首をかしげていたら、「こっちを上がっていったら、すぐてっぺんやで」。
さきほどのグループの方が教えて下さった。ほんの数分の急な道で頂上へ。
そこでは、秋の蝶が乱舞していた。(この項続く)

  
声もなく秋の蝶舞ふ記紀の山      みどり


            

倉橋みどり

奈良に暮らし、奈良をこよなく愛するフリー編集者・文筆家。著書に『奈良の朝歩き、宵遊び』など。奈良の歴史・文化を編集発信するNPO法人文化創造アルカ理事長。武庫川女子大学非常勤講師。奈良女子大学なら学研究センター協力研究員。俳歴33年の俳人でもあり、NHK文化センターほかの講師、俳人協会幹事を務める。