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四季折々に思うこと Ⅱ-32

踏花舎 倉橋みどり

「てるてる坊主」 イラスト・榎森彰子

奈良の五條に「晴れ祈願」で知られる生蓮寺というお寺がある。
弘法大師が高野山を開かれる際にこのお寺に立ち寄り、道中の好天を祈ったことに由緒がある。
そのため、お寺のあるあたりを「寄足(よらせ)」と呼ぶようになり、お寺の山号も「寄足山」という。

ちょうど七月のお大師さまの縁日に、初めて生蓮寺にお参りすることができた。
境内には、120以上の品種があるという蓮の花、そして、千を超えるてるてる坊主が揺れていた。
ハンカチや余り布を使っているのだろう、さまざまな色や柄、大きさのてるてる坊主が山門に、ご本堂の軒に吊られ、なかには疫病退散の力を持つという妖怪「アマビエ」に似せたものも…。

高畑公紀ご住職にお話を聞くと、2016年から毎年、 堺しらさぎ Art Avenue(大阪府立大学&しらさぎ商店街)に使われたてるてる坊主が奉納されていたが、今年はコロナ禍でイベント自体が中止。
それならば…とSNSなどを通じ、てるてる坊主の奉納を呼びかけたところ、全国から集まり、吊るす場所がなくなりそうな勢いだという。

ご本堂では、とても端正なお姿の大きなお地蔵様(像高約3m)を拝ませていただいた。
地獄にまでやってきて、私たちを救ってくださるというお地蔵さまの丸いお頭は、なんだかてるてる坊主に似ている。
天気だけでなく「心も晴れますように」という祈りが大きな力となりますように。

明日散るてふ蓮は開きしまま揺るる     みどり


            

倉橋みどり

奈良に暮らし、奈良をこよなく愛するフリー編集者・文筆家。著書に『奈良の朝歩き、宵遊び』など。奈良の歴史・文化を編集発信するNPO法人文化創造アルカ理事長。武庫川女子大学非常勤講師。奈良女子大学なら学研究センター協力研究員。俳歴33年の俳人でもあり、NHK文化センターほかの講師、俳人協会幹事を務める。