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四季折々に思うこと Ⅱ-28

踏花舎 倉橋みどり

「椿」 イラスト・榎森彰子


今年の春は、新型肺炎の感染拡大防止のため、大きなイベントが相次いて中止延期を余儀なくされた。
そんな中、東大寺二月堂修二会は例年通りの行がつとめられ、無事満行を迎えた。
確かにお松明に集まる人も、そのあと局で聴聞する人も驚くほど少なかったが、もとより人に見せるための法会ではないのだから、練行衆にとっては何ということもないのだろう。
でも、今年はその「普段通り」ということが本当にありがたく、多くの人を慰めたと思う。

今年は仕事の都合で、二月堂に上がることができたのは12日だけ。
一番大きな籠松明を拝見し、そのあとは局で声明に耳を傾け、お香水(聖なる水)をくみ上げる「お水取り」を見て……と、結局明け方4時ごろまで二月堂を去ることができなかった。
大学時代にお世話になった先輩ご夫妻もご一緒した。
東京在住のおふたりは初めての修二会。
奈良時代以降一度も途絶えておらず、今年で1269回目だという歴史に驚き、籠松明の迫力に感動し、国宝の二月堂で火を床に打ち付ける「だったん」に度肝を抜かれたと言い、翌日の会食では、3時間以上修二会の話題が尽きなかった。

知るほどに謎が増し、もっと深く知りたくなる。
修二会に魅せられた人は、みんなそう言う。
終わったばかりなのに、もう来年の修二会が待ち遠しい。

満行や大和の春は調ひぬ   みどり


            

倉橋みどり

奈良に暮らし、奈良をこよなく愛するフリー編集者・文筆家。著書に『奈良の朝歩き、宵遊び』など。奈良の歴史・文化を編集発信するNPO法人文化創造アルカ理事長。武庫川女子大学非常勤講師。奈良女子大学なら学研究センター協力研究員。俳歴33年の俳人でもあり、NHK文化センターほかの講師、俳人協会幹事を務める。