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四季折々に思うこと Ⅱ-27

踏花舎 倉橋みどり

「紫木蓮」 イラスト・榎森彰子


2月に入ると、東大寺の境内の空気が少しずつ変わっていく。
3月1日から始まる修二会本行に向け、二月堂へ行く石段や登廊の脇には竹垣が組まれ、参籠宿所の前には、まっすぐに伸びた根付の青竹がずらりと並ぶ。
これは各地の講から奉納された青竹で、墨で「家内安全」「健康祈願」などの願いごとと、奉納した方のお名前が書かれ、よく見ると有名な役者さんやシンガーソングライターの名前もあったりする。

この青竹は、修二会の華でもあるお松明に使われる。
修二会本行の14日間、毎日午後7時ごろ、長さ6メートルもの大きなお松明が、二月堂の欄干に上がる。
12日はとりわけ大きな籠松明が11本。そのほかの日は10本の松明が次々と上がる。

お松明は、修二会の華と書いたが、実は、お松明を持つのは連行衆(僧侶)ではなく、お世話役をつとめる童子さんである。
境内に夜の帳が下りるころ、仮眠を終えた連行衆がひとつずつ、二月堂へと上がっていく。
その暗い足元を照らすのがお松明で、1200年以上の歴史を重ねるうちに今日のように大きくなっていったといわれる。
登廊を登り切った連行衆は、ひとりずつお堂へとお入りになる。差懸(さりかけ)を響かせながら。
役目を終えたお松明は、童子さんによって二月堂の欄干へと運ばれ、盛大に火花を散らしては歓声を浴び、端から端まで一気に走る。

おたいまつ衆生へと降りかかる華 みどり


            

倉橋みどり

奈良に暮らし、奈良をこよなく愛するフリー編集者・文筆家。著書に『奈良の朝歩き、宵遊び』など。奈良の歴史・文化を編集発信するNPO法人文化創造アルカ理事長。武庫川女子大学非常勤講師。奈良女子大学なら学研究センター協力研究員。俳歴33年の俳人でもあり、NHK文化センターほかの講師、俳人協会幹事を務める。