topics トピックスTOPICS

四季折々に思うこと Ⅱ-25

踏花舎 倉橋みどり

「鬼柚子」 イラスト・榎森彰子

奈良と山口、私にとってふたつの故郷を結ぶ旅をした。
奈良東大寺は、平家の焼き討ちで、大仏殿はじめ多くの建物を焼失した。この再建のプロジェクトリーダーは俊乗坊重源上人。
61歳だったという。
このとき、材木を調達したのが、周防国(現在の山口県)で、いまも徳地を中心にゆかりの寺院や遺跡がある。
徳地町のすぐ隣で生まれ育ったので、幼いころから「ちょうげんさん」には馴染みがあった。
奈良で仕事を通じて東大寺さんの歴史に詳しくなると、重源上人がどれほど凄い仕事をしたのかがわかるようになった。

昨年の春、山口で講演の機会をいただき、それがきっかけで「山口市徳地観光大使」第1号にも任命してもらったので、最初の仕事として、徳地をじっくり巡る旅を企画した。

東大寺南大門から、バスで14人の方々といっしょに徳地へ。
片道7時間の強行軍だったが、ゆかりの寺院である阿弥陀寺、法光寺、月輪寺にお参りし、天皇陛下が皇太子時代に訪れたという佐波川関水などを見て、重源上人がつくった石風呂にも入った。
地元の人が作ってくれた奈良と同じおちゃがい(茶粥)もしみじみとおいしく、元気を充電できる旅になった。

歴史をポイントではなく、時間的空間的な「つながり」で見つめ直すのはおもしろい。
今回の旅でも800年前の仕事ではなく、800年間なにが守り伝えられてきたのかを確認したいと改めて思った。

鬼柚子をごろんと後部座席へと      みどり


            

倉橋みどり

奈良に暮らし、奈良をこよなく愛するフリー編集者・文筆家。著書に『奈良の朝歩き、宵遊び』など。奈良の歴史・文化を編集発信するNPO法人文化創造アルカ理事長。武庫川女子大学非常勤講師。奈良女子大学なら学研究センター協力研究員。俳歴33年の俳人でもあり、NHK文化センターほかの講師、俳人協会幹事を務める。