topics トピックスTOPICS

第64回 ベーカリーカフェ 風

フォトライター 八木洋行

藤枝市を流れる瀬戸川の中流域助宗に、障がい(身体・精神・知的)を持つ仲間が寄り添い運営される「ベーカリーカフェ 風」がある。
天然酵母を使って北海道産の小麦でパンを焼き、その販売と接客などの活動を通して人としての成長を目指し、自分の居場所づくりと安らぎの場所づくりを行っている。
現在は「特定非営利活動法人 風」となっているが、ここを立ち上げて、小麦の栽培から始めたのが岸俊子さん(昭和23年生まれ)だ。

そもそも岸さんが、この1日24時間すべてを注ぎ込む苦労ばかりのベーカリーカフェを立ち上げたのは、一人息子の亮君が、頭蓋骨損傷右脳壊死という最悪の交通事故にあってからだった。
亮君は奇跡的に生還、しかし、それまでの安らかな家庭は一変し、地獄の日々が始まった。
亮君の苦痛は母親の俊子さんでも受け止めきれないほど…絶望の暗闇に叫び続けても止まないのだ。
そんな息子と向き合う日々、息子の居場所と安らぎの場所を探した。
結局、同じような苦しみを持つ親子を知り、独りぼっちじゃないんだと前向きな自分を見つけた。
そして、パンづくりから始めようと「ベーカリーカフェ 風」を一人で金策して始めた。平成12年だった。

一般就労に必要な知識と能力を習得して、ここから巣立った卒業生は30人余。
現在は、5人のスタッフと一緒に16名の障がいを持つ人が働いている。
親に車椅子で連れてこられた青年が、もう普通に対応している。
俊子さんは「精神的な障がいを持つ人にはとにかく話しかけて話しかけて、その人の心に届くまで根気よく話しかける。
それと、同じような仲間が身近にいること」そういうことらしい。
俊子さんは、グループホームという、障がいを持つ7人と一緒に暮らして、自立した日常生活ができるように支援もしているというから驚きだ。

12歳で事故にあった息子さんも40歳になった。これまでに2度、死の淵をさまよったが生還している。
「息子に生かされている」と、帰り際、呟かれた。

ベーカリーカフェ 風

住 所:藤枝市助宗1273-1
電 話:054-644-1008
営 業:9時~16時
定休日:土・日・祝