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第62回 臼祖婆(うすんばあ)さん

フォトライター 八木洋行

新型コロナウイルスのために取材ができない。
そこで今回は、咳の神さんを紹介したい。

新型コロナウイルスは肺炎をもたらし、ひどい咳が出るのが特徴らしい。
これは大きな目で見れば流行り風邪の一種。
昔は俗に「シャーラシャブキ」と呼んだ。
咳でシブキが飛ぶ症状かららしい。
その「シャーラシャブキ」に効験があるという咳の神、「臼祖婆さん」と呼ばれる磐座が、藤枝市青島区の駿河台近くにある。
「志太のピラミッド」と呼ばれ、近頃なんでもUFOの出現するパワースポットで知られる烏帽子山の北東麓にある。

『駿河志料』には「臼祖母巌、此形、人の口を開いたるに似たり。この巌に足をかくれば祟りありと云ふ」とある。
『静岡県志太郡誌』には「巌は正面中央窪くして、この形臼に似たるを以て臼ンバーサンと云う」と記す。
移転した「臼祖婆さん」の説明板には、「姥神様の元の場所の前には鏡のような水田があり、<姥の鏡田>と呼んでいた。小児の咳痰(シャーラシャブキ)に霊験あり、近郷は勿論遠く遠州からも参詣があった。立願果たしには青竹の折り掛けに酒を満たして供える」とある。 

元の場所は烏帽子山を背に西風も当たらない姥ケ懐という地形にあり、鏡のような田んぼは西風の季節風が吹きたてても波立たない。
「臼祖婆さん」の口のような窪み、この口をシャーラシャブキの大咳に見立てると、目の前の波も立たずに鏡のように平らかなのが……咳を止める効験・信仰につながったと考えられる。
さらに姥神伝説には、子育てに関わるものが多いことから、小児の咳痰にとりわけ効験があるとされたのだろう。
また、ほり窪んだ石や岩には、霊力があると古代から人々は受け止めていた。

現在「臼祖婆さん」の磐座の前には小さな祠が建つ。
お賽銭がだいぶ上がっていた。こんどの新型コロナの沈静祈念と病気平癒の立願があったのだろうか。
看板には4月3日に祭りを行っているとある。
昭和40年代までは3月3日だった。雛節句に当てていたのだ。
ここにも子供の咳の神さんというアピールがある。
とにもかくにも、はやく沈静するよう「臼祖婆さん」に祈った。