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第59回 沼津港の揚げはんぺん

フォトライター 八木洋行

今年の正月は、海上から千本松原を手前に、富士山を眺められる贅沢なクルージングがあるというので出かけた。
所要時間は30分。出港寸前あわてて乗船。
港を出るとすぐにカモメの群れが船にまとわりつく。
船内で購入した「かっぱえびせん」を袋からつまんで放ると、カモメは見事に嘴でキャッチして飲み込む。
塩分過多を心配しながら一袋全部を放る。
この日は快晴で、雪をかぶる富士山がパッキリ見えてすこぶる爽快で愉快なり。1,100円の乗船代も納得だった。

船を降りて、沼津港食堂街をひやかす。
20年ぶりに来たのだが、ずいぶん店が増えた。それと中国人観光客がやたら多い。
事務局の桐子さんの友人の従弟の店だという揚げはんぺん屋を探す。
あった、有名な寿司屋の並びに「やいづ屋 港の揚げはんぺん屋」という看板を見つけた。
沼津港でやいづ屋というのはハンディになっていないかと思ったが……。
伊豆半島の港町にはけっこう他所の町の薩摩屋とか相良屋、伊勢屋などの屋号をもつ店が多い。
それはかつて、海の道を通じて人と物の交流が盛んだったからだ。

店の半分が揚げ場で、半分に揚げはんぺんのそろい踏みだ。創業は大正4年。
4代目の岩本謙一郎さん(昭和51年生まれ)によると、最初は魚の練り加工品卸で焼津から沼津にやってきたのだという。
港に店を出したのは2010年だった。
沼津港にあがるイワシ・アジを中心にグチ・タラを混ぜて練り、大豆白絞油で揚げる。
油の温度は150~160度。じっとはんぺんの色つき具合を見て揚げるようだ。

一番人気は、まかないで始めた「はんぺんメンチ」。野菜とイカ・タラ・グチ・豚のひき肉少々を混ぜて練り揚げる。
さっそく1枚いただく。はっふーハホハホ、揚げ立ては熱い。
やや、この噛み応えはなんだ。噛むたびに来る反動が半端でない、噛み応えも味の一つだとよくわかる。

美人の4代目の連れ添い典子さんが「この紅ショウガ入りもなかなかですよ」と、ハート型のほんのり紅色はんぺんを摘まむ。
「それも頂きまーす」
店を出ると冷気がまとう。急に手にしたはんぺんを、おでんで食べたくなった。

やいづ屋

住 所:沼津市千本港町122-4
電 話:080-3254-8810
時 間:平日 11時~15時30分  土日祝 10時~15時30分
定休日:火曜日