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第56回 ポン菓子

フォトライター 八木洋行

学校の帰り道、耳の立った茶色の犬が門前小路の曲がり角に居た。それでわかった。
「ハザシ屋が来ているぞー」と、大声をあげて私たちは小路へ走る。
その茶色の犬は、「ハザシ屋」のリヤカーを引く犬だった。

藤枝の町で育った私は、「ポン菓子屋」を「ハザシ屋」と呼んでいた。
黒い筒状の機械を乗せたリヤカーに綱で結わえられた犬が、ハザシ屋の小父さんと時々やって来るのだ。
長楽寺の門前小路へ曲がったとたん、「バーン」と猛烈な音がした。
金網の筒に膨らんだ米粒があふれるように飛び散っていた。

あのハザシ屋の小父さんと茶色の犬は、東京オリンピックの聖火ランナーが町を通り過ぎて行ってから……
見なくなった。
同じころ、紙芝居屋の小父さんの姿も私たちの前に現れなくなった。

あれから50年以上も経っている。
ところが、テレビで懐かしのポン菓子屋の平和堂を紹介していた。さっそく出かけた。
店は安倍口新田バス停のすぐ近くにあった。

ご主人は平垣悦子さん(昭和52年生まれ)という主婦。
10年前の平成21年に「焼ポン」という、栗を専用機で焼き栗にして販売するフランチャイズに加入。
お祭りの日に、娘が「おいしい栗だ」と感激したのがきっかけだったという。

ところが店を訪れるお客から、「ねえ、お米でもできない?」と言われ考えた。
いまある焼きポンの機械は栗専用機。そこで米もできる機械を導入しようと決定。
開店から半年後、機関車のD51をデザインしたポン菓子機(正式には穀類膨張機というらしい)を導入してポン菓子も始めた。
白米・玄米・もち米・あられ・パスタなどなどを小袋入り200円で販売する。
来客数も増えた。私のような懐かしいという思いで訪れる客も結構いるようだ。

取材中、米を持ち込みポン菓子にしてくれという老夫妻が来た。
米1.5キロ(1升)の加工賃が1,200円。
砂糖も持ち込めば溶かしてかけてくれる。
私は焼き栗(130g660円)と玄米・あられを購入。
久々バスに乗って静岡郊外を旅した。

平和堂

住 所:静岡市葵区安倍口新田424-2
電 話:054-298-6110
時 間:10時~17時
定休日:月曜日