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534. 城下町会津に日本を代表する銘菓あり

会津の郷土菓子を作り続けてきた「本家長門屋」の菓子が、2016年の伊勢志摩サミットで各国のVIPに供されたと知り、久しぶりに会津若松へ出かけた。
その「香木実(かぐのきのみ)」は、会津産の鬼クルミを上質なこし餡で丸ごと包み、黒砂糖をまぶす、トリュフをイメージする丸い菓子だ。
昭和50年に現当主5代目鈴木隆雄さん(昭和26年生まれ)が発案創作した。

隆雄さんは、「サミットのご用命は、東日本大震災への配慮もいただいたと思います。
一度は原発事故の風評被害で暖簾を下ろすことも考えましたが、『長門屋さんのお菓子には思い出があるのだから続けてくださいね』というお客さまのひと言で、やはりここで商いを続けて行こうと決めたときでしたから、これは本当にうれしかったですね。勇気をいただきました」と語られる。

会津藩主松平容敬(かたたか)から「庶民の菓子を作れ」と命を受け、初代長平が菓子を作り始め、暖簾をあげたのが嘉永元年(1848)というから、ペリーが黒船を率いて浦賀にやってくる5年前ということになる。
松平容敬は冷害のために飢饉を2回経験し、質素倹約を旨に藩政改革に取り組んだ人だ。
上菓子でなく「庶民の菓子を作れ」という命には、そういう背景があったかと思われる。
以来、長門屋では郷土菓子作りに取り組んできた。

鬼クルミは、「剥き胡桃」として毎年江戸の藩邸に届けられていたという。
割れやすいクルミの中身をそっくり取り出す技術が、会津にはあったのだ。
この技術を生かして生まれたのが「香木実」だった。

取材の帰り、飯盛山の中腹にある白虎隊のお墓に詣でた。
ご主人が車で送ってくださり助かった。
車中、墓の隣にある会津さざえ堂の話になった。
さざえ堂の二重螺旋階段の構造は、イタリアのレオナルド・ダ・ビンチの設計といわれるフランス・ロワール地方のシャンボール城の二重螺旋階段が知られるが、これが長崎を通じて会津にもたらされたか……という説もあるらしい。

会津はトリュフをイメージする「香木実」といい、ハイカラな知性が凄いぞと思った。

5代目鈴木隆雄さんと娘さん

本家長門屋 
会津若松市川原町2-10

文・写真 八木洋行