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533. レンガ窯の高熱で一気に焼く

喜多方は蔵とラーメンが売りの町だ。
会津若松と米沢を結ぶ、米沢街道の中継ぎ町として発展した喜多方は、酒と醤油の醸造業が盛んでもある。
醸造元の煙突は煉瓦造り。
この煉瓦、実は喜多方で焼かれた「喜多方煉瓦」と呼ばれるもので、凍害防止の釉薬を施す特徴がある。
もともと赤い屋根瓦を焼く産地であったが、岩越鉄道(現JR磐越西線)の敷設工事で、トンネルの内壁に
使われたのが煉瓦を焼く始まりとなった。
鉄道が敷設されると、今度は喜多方の蔵の外壁に使われ始める。
白いなまこ壁に、腰壁煉瓦を使用した蔵が多いのもそういう理由だ。

その喜多方煉瓦の窯で煎餅を焼くのが「山中煎餅本舗」。
創業は明治33年、現在は5代目の渡部ひとみさん(昭和53年生まれ)が牽引している。
薄く伸ばして型抜きした生地24枚を、金網に並べて挟み煉瓦の窯に入れると、ほんの3秒で焼き上がる。
直径7.5センチだった生地が12センチになっている。
これをすぐたまり醤油に浸け、取り出せば完成だ。
さっそく1枚頂く。「バリパリ」……音も味のうちというが、こりゃいい音だ。
かみ砕き喉越し直前、たまり醤油の味わいが滲む。

店頭で、煎餅の炭火の手焼きが体験できる。
開店してすぐ、子供3人とその両親に祖父母という大家族が入ってきた。
七輪に起こした炭火で煎餅の生地を炙る手ほどきを、まずひとみさんが直伝。
そして子供たちが順番に手焼きを体験する。
炙りはじめると急にふくらむので、その度に歓声があがる。

ところで、喜多方は会津若松への対抗心が強いと聞く。
鈴木清順監督、高橋英樹主役の映画「けんかえれじい」は、旧制会津中学と喜多方中学のバンカラ生徒の喧嘩を青春コメディ風に描いた。
喧嘩に勝った喜多方中学の番長役高橋英樹に停学を言い渡す校長が、
「すかすだ、おまえも、そうとうやるのう」
と、嬉しそうにいう場面は今も忘れられない。
たまり煎餅をかじりながらもう一度、あの「けんかえれじい」を観たいものだ。

山中煎餅本舗 
福島県喜多方市字1丁目4643

文・写真 八木洋行