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530. 餃子のまち宇都宮に三代の母ちゃんが育てた煎餅があった

宇都宮駅で日光線に乗り換え最初の駅、鶴田で下りる。この駅はホームの両側が線路に接している「島式」というプラットホームタイプで、駅舎改札口へは跨線橋を渡らなければならない。驚いた。上り口に「明治四十四年 鐵道院」「浦賀船渠株式会社製造」と刻印されたプレートを貼り付けてある。日本海軍の駆逐艦を建造していた工場のつくりだけに強靭な鉄骨の組み上げと、この時代の美学が調和しており見事だ。
平成20年に、経済産業省が近代化産業遺産と認定したとある。納得だ。

駅を出ると、大越啓子さん(昭和30年生まれ)が出迎えてくださった。
駅は無人でタクシーも無いのでありがたい。
しかし、啓子さんの運転は猛烈だった。駅から15分と聞いていたが10分で着いた。

大越米菓店は、初代トク(明治38年生まれ)が大正15年に始めた。
夫は鶴田駅近くで鉄道を製造していた富士重工宇都宮工場へ勤めていた。
二代目キイの夫義男は鉄道員だった。
そして三代目啓子さんの夫眞さんは不動産業を営む。
すると大越製菓店は代々、女たちによって煎餅を焼いてきたということになる。

啓子さんは、母の代で煎餅屋はやめようかと迷ったが、有機米を使い、人工甘味料や防腐剤などを
一切使わない、赤ちゃんも安心して食べられる煎餅を、と引き継いだ。
創業以来の醤油に足す出汁も、サバ節・干しアジ・昆布を使う。
米は大田原市の農家を訪ね、自分の目で見て確かめ買い求めている。

煎餅の工程は、まず米を洗い、水切りして蒸す。
そして煉り、板にして型抜きして乾燥。ここまでが生地作り。
そして焼き工程だ。火加減は女三代が掴んだ感。焼きあがるとタレ付けして乾燥。ここまでに3日はかかる。

〈餃子せんべい〉は、啓子さんのアイディアだった。餃子の形をしている。
噛みつくと餃子の匂いがする。カリッ、カリッ……止まらない。少し落ち着くと、焼き加減が米と醤油の
焦げ味を引き出していることに気づく。
煎餅は、歯ごたえとその音、香り、米と醤油の焦げ味の結晶体なのだと頷く。

現在、パートさん3人とご主人が朝の2時間手伝ってくれる。
しかし、啓子さんは朝の4時から作業開始だ。袋詰めも手作業なので夜の9時まで。とにかく忙しい。
猛烈運転も理解した。

 

大越米菓店 
栃木県宇都宮市西川田町805-16

文・写真 八木洋行