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528. 高原フレッシュバターをさっくりブッセがはさむ

東北本線黒磯駅の駅前に明治屋さんがあった。
明治屋の屋号は、初代宿岩信義が東京水道橋の明治屋で修業し暖簾分けされたからだ。
明治末に千駄木町で創業。ところが今度の戦争で被災され、那須の黒磯に疎開。
それが縁で戦後黒磯駅前に店を出す。

まず温泉饅頭を作り売り出した。
黒磯駅は塩原温泉・那須温泉・板室温泉の入り口だったからで、すぐに評判となる。
温泉饅頭は現在も好評で、地元の小豆を使い、小豆風味が濃い温泉饅頭だ。

昭和47年那須野をイメージできる洋菓子をと、2代目は地元那須の牛乳を生かす洋菓子〈那須野ボッカ〉を創案した。さっくりふんわりのブッセ生地で、那須高原で育まれた乳牛から作られるフレッシュバター数種類をブレンドして挟んだ。
さっそく頂く。なるほど、バターのちょい塩味とほんのり甘いブッセとの絡み味が那須高原の風だ。
「風は高原から牧場の匂いと歌声をのせてきた」……と、にわか詩人になった。

那須野ボッカは、昭和47年に商標登録。
五十嵐豊氏のデザインになる牛に乗って笛を吹く少年と手を振る少女の包装紙がいい。
現在は3代目宿岩幹弘さん(昭和48年生まれ)が継承される。

ところで黒磯駅は、「乗り鉄」には大変有名な駅だということを付け加えたい。
まず、東北本線が電化時、当駅以南は直流電化、以北は交流電化され国鉄時代から運用上の境界となっており、JR発足後の1990年(平成2)に「宇都宮路線」の運行名が与えられた。
黒磯駅~盛岡駅間とはラインカラーも違い、東京近郊区間は黒磯駅までとなっている。
この黒磯駅で、直流から交流に切り替える複雑なシステムがあったのだが、現在は構内にフリー区間があって、そこに電車が入ると自動的に切り替えるようになった。

それと、皇室の方々が休まれる貴賓室があることだろう。
昭和天皇・皇后両陛下は、新幹線が開通してからも那須御用邸へ向かわれる度にこの黒磯駅に下車されていた。
道を挟んで明治屋の真ん前にある蕎麦屋の女将さんの話では、天皇陛下がおいでになるたびに小学校と中学校の生徒は駅前の道に並び、お迎えしたという。
そのとき犬が道を横切ったりしたら大変で、それで左遷された警察署長もいたという。

 

明治屋
那須塩原市本町4-3

文・写真 八木洋行