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546 矢作橋の橋詰めに銘菓を見つけたり

©近江屋本舗

徳川家康が生まれた岡崎城の西を流れる矢作川。
東海道線を走った蒸気機関車は、この矢作川の川砂で動輪を動かしていた。
停止した機関車が動き出すときや、急坂を登るとき、レールと動輪の間に砂を撒き滑り止めにしていた。
鉄分の多い花崗岩の川砂を一度焼いてから、細かい目の篩にかけて使ったのだが、矢作川の川砂に代わるものは無かったという。

この矢作川に架かる矢作橋で、後の豊臣秀吉こと日吉丸と、蜂須賀小六が出会う話を知っていれば、かなりの歴史好きだ。
現在の矢作橋は立派な4車線の橋で、橋詰には日吉丸と小六の出合之像が建つ。

この矢作橋の西、旧東海道に、明治44年創業という近江屋本舗がある。
初代黒田三男三郎は浜松の近江屋で修業、暖簾分けされた。
現在は3代目黒田紘右氏と、二人の息子さんと娘さんが支えている。

昼過ぎに暖簾をくぐると、次男の祥裕さん(昭和52年生まれ)が対応してくださる。
ところが、すぐに来客があり、それが1時間近く途切れない。しかも若いカップルが多い。
和菓子離れの若い世代が来店するのは、和洋折衷の菓子がたくさん創案されているからかと思った。

お茶菓子に出された〈夢大福〉は、羽二重餅でムースを包んだふわとろの食感で、口に入れたとたん「えーっ 本当」と、声が出る。食べるのでなく飲む大福だ。なるほど時代を先行して疾走するすごい和菓子屋だ。
今回は、数ある中から「おひろい」と命名された、しっとりした卵せんべいで餡を挟む、満月もスーパームーンを思わせる菓子を選んだ。

この「おひろい」は、3代目が昭和50年代後半に創案された。
なんでもCBCラジオで週一回放送していた永六輔の番組で、「おひろい」とは女房詞で歩くことや散歩することを意味する尊敬語だと知り、次に作る菓子には是非に「おひろい」と名づけようと決めてたという。

2ミリ弱の薄い卵せんべいに挟まれた「おひろい」は、直径6.5センチ、厚さ8ミリ弱。
餡は小豆の皮を取り去り炊いたこしあんと、粒あんの2種類。
こしあんは卵せんべいの風味が広がり上品な味わいを醸す。粒あんの方は卵せんべいがシナモン味で、粒あんと妙に相性がイイ。

日が傾きだしたら、冷やしておいた「おひろい」を薄いガラスの皿にのせ、冷水で点てた冷抹茶でいただきたいところだ。
銘菓を味噌の町で見つけた。

出合之像
近江屋三代目と三兄妹









近江屋本舗 
岡崎市矢作町加護畑107

文・写真 八木洋行