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543. 日本にここだけの塩鰹を食卓に

塩鰹の掛魚
鰹節製造の風景

正月に鮭を掛魚にする東日本と、鰤を掛魚にする北陸から畿内を中心にする西日本と、日本列島の正月の掛魚が鮭、鰤に大きく分かれていることはよく知られている。
ところが、伊豆半島は西伊豆の田子と安良里は塩鰹を正月の掛魚にしている。
『静岡県史』によると、「西伊豆の田子港と安良里港では、塩鰹を正月のカケノヨ(掛魚)にし、セチバと呼ぶ家の正月様を祀る場所に吊るして豊漁と航海安全を願う。正月2日の乗り初めの朝、船に祀る船霊さまに塩鰹の切り身を供える」とある。  

田子港

田子港はご存じの通り、本枯れ節の鰹節生産地として全国に知られ、昭和30年代の全盛期には40艘のカツオ船が港に船首を並べていた。
本枯れ節の鰹節を製造するカネサ鰹節商店の芹沢安久さん(昭和43年生まれ)によれば、正月の乗り初めの日に、船主が乗子たちに塩鰹を贈る。これを受け取ると、今年もカツオ船に乗りますよという暗黙の約束が交わされたのだという。
塩鰹は、カツオ漁からサンマ漁に切り替わる8月末から加工され、腹を深く割き内臓を取り出すと、塩を腹に詰める。これを塩水に2週間前後漬ける。すると塩水の色が変化してくる。その色合いで十分塩が鰹の身に入ったかどうか判断して桶から取り出し、真水で塩を洗い流してから、竹の櫓で陰干しする。西風が吹き始めるとぐっと身がしまり、塩鰹ができあがる。

食べるときには、食べる分を切り身にして火に炙ってからほぐして茶漬けにしたり、酒の肴にした。
酢に漬けて塩を抜き、酢の物にしてもおいしい。ところが、塩鰹の高塩分がこのご時世にそぐわないのか、売れなくなってきた。

そこで、この郷土料理を絶やしてなるものかと立ち上がったのが、三角屋水産の中島繁社長だった。
田子のカネサ鰹節商店の本枯れ節の伝統製法を生かして、商品開発したのが「万能塩鰹茶漬け」だ。
塩鰹の切り身を「手火山式焙乾製法」という遠火で燻煙しながら、鰹の持つうま味を引き出したところに郷土の食文化への深い愛がにじむ。

(有)三角屋水産 
賀茂郡西伊豆町仁科1190-2

文・写真 八木洋行