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541. エビ風味の魚醤は、未知の味覚領域を広げる

魚を原料にする調味料、秋田の「しょっつる」、能登の「いしる」、香川の「いかなご醤油」を日本三大魚醤という。「しょっつる」はハタハタが原料。「いしる」はイワシかイカを使う。「いかなご醤油」はイカナゴを使う。

魚醤はすでに奈良時代に文字記録はあるが、鎌倉時代から調味料として普及したという。
しかし、江戸時代になり大豆を原料とする醤油が普及しだすと、魚醤は各地から消えていった。

「いかなご醤油」も一度は消えたが、最近復活するなど、このところ各地で新たに魚醤作りが始まっているようだ。
北海道のサケとホッケを使った魚醤をはじめホタルイカ魚醤、サンマ魚醤などなどが顔見世している。
これはベトナムやタイなど、東南アジア料理が日本でも普通に食べられるようになり、「ニョクマム」「ナンプラー」などの魚醤がマーケットに並び始めたことも背景にあるらしい。

そんな中、酒田に「あみえび醤油」という魚醤が登場した。
アミエビは釣りの時に撒き餌として使われるエビの一種で、酒田はもともとアミエビを生食する食文化があり身近な食材だった。ところが衛生上の理由で生食に不安を持つ消費者が多くなり、自然漁獲量が落ちてしまった。
このままだとアミエビの食文化も消えてしまうのでは、と危機感を持った髙橋精一さん(昭和32年生まれ)が、アミエビで魚醤が作れないかと試みた。
アミエビは2月初めに青森沖から南下し、3月初旬から4月中旬にかけて山形沖で獲れる。これを塩漬けして発酵させ、2年で仕上がる。
ここに至るまでには塩加減と、発酵させて寝かす期間などを試行錯誤し、平成25年に出来上がった。

髙橋さんは、酒田港にあがる鮮魚を卸売りする仕事に就いていたが、自分の思いを即実現したく会社を立ち上げた。そして、すぐにアミエビの食文化の衰退を何とかできないかと取り組んだのだった。
おそらく、大きな組織ではこの決断はできなかった。
ときに織田信長のような独創性に富む人が強引に牽引する場面があるものだ。

帰宅して、さっそく焼き飯に〈あみえび醤油〉ひと垂らし…。
これが美味いこと、美味いこと。
どうしても一瓶手元に置きたくなるぞ、こりゃ。

新栄水産 有限会社 
酒田市山居町2-14-22

文・写真 八木洋行